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Vol.31
星空に響くドゴンの歌
Dogon Country, Mali/マリ・ドゴンカントリー

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

マリ東部、ドゴンカントリー。数百年前、サハラ砂漠を越え北部からやって来た人びとによって、それまで土着信仰しかなかったマリの人々の多くはイスラム化されていった。その際、それまでの土着の神々を捨てきれない彼らは、独自の文化と宗教とともに静かに暮らせる場所を求めて荒野を彷徨い、やがてこの場所にやって来た。地平線の先まで広がる荒野に突然現れる断崖絶壁。その崖下にへばりつくように彼らは身を潜め、大地に祈り、生きてきた。その地は数千年前からピグミー族が何も語らず静かに暮らしていた土地であったが、秘密を好むピグミー族はそのうちいなくなり、いまはドゴン族と呼ばれる民族だけが暮らしている。その地を歩いた。昼間は乾燥した熱風が吹き抜け、崖と一体化したような不思議な光景の村々では、そこで暮らす人々の活気で溢れている。

独特なリズムと動きのドゴンマスクダンス

日が暮れ、星が出始めた。このとき新月。月明かりはなく、星々はとてもきれいに輝いている。建物の影や巨岩が立体的に浮かび上がって見え、星の明るさに驚く。暗闇からまだ続く市場の活気が伝わって来る。村人の声が崖に反響して、立体的な臨場感がある。無数にきらめく星。遠くから聞こえる静かな生活の音が心地よい。それらに耳を澄ましていると、何処からともなく、ドラムのリズムと歌声が聞こえて来た。
音が聞こえる方へ歩いていくと、泥と岩でできた小屋の中から人々が歌い踊りながら出て来た。何かの祈りなのだろうか。彼らの恍惚とした表情が闇夜に浮かんでいる。歌声とドラムの音は夜空の下で岩山に反響し、まるで星が歌い、大地が奏でる音のように体に響いてきた。

翌朝、岩山の上から地平線から登る朝陽を眺めた。遥か彼方から放射される橙色の優しい光。それを体全体で受けていると、少しずつ浄化されるようなイメージが湧いてきて、朝陽の透明感が体内に満ちていく。

木々の合間から村人が朝食の準備をする煙が立ちあがり、黄金色の光りが差し込む。煙はまるで生きているかのように立体的に村を包み込む。その景色のなかから、さまざまな生活の音が聞こえてくる。井戸で水を汲む人、頭に水を乗せ歩く人たち、朝から踊り叫ぶ子供たち、いつもと変わらぬお気に入りの場所でまどろむ老人たち。家の中では娘たちが臼で穀物を砕き、母親がかまどで火を焚く。父親は畑で水を撒き、息子たちは牛車に乗ってご飯を畑へと運ぶ。ここには生活がある。確固たる生活が。

ドゴンには現代文明と呼べるものはほとんど何も無い。しかし、僕はこれまでここまで豊かな日々を営んでいる人々を見たことがない。ドゴンでの滞在は素晴らしい体験であった。

*ドゴン族の住むバンディアガラの断崖は世界遺産に登録されている。

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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いま、世界一周の途中。

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