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Vol.24
オカバンゴデルタに沈む夕陽
Okabango Delta, Botswana/オカバンゴ・デルタ、ボツワナ

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

木彫りの伝統カヌー、モコロが水面を滑るように進む。浮き草や蓮の葉を舳先で掻き分けて行くと、突然視界が広がった。オカバンゴデルタの広大で青い空が、凪いで鏡のようになった水面に反射して、眼前は上も下も空。モコロはまるで空を飛んでいるようである。水草の多いデルタではオールは草が絡み付いて使い物にならない。なので長い棒を操って水底を押し、船を操る。これが結構な重労働である。オカバンゴデルタでモコロガイドをする人間はみな肩が異様に盛り上がっているのも、この木の棒による操船によるものである。

およそ2時間ほどデルタを進み、適当な小島に上陸。今日は、ここで一泊する。日が暮れないうちにテントを張り、野営の準備をする。薪を集めるために少し歩くと、近くのブッシュがワサワサと揺れている。なんだろうと思って見ていると、突然、巨大な雄のゾウがブッシュの中から現れた。巨大で立派な牙が反り曲がり天を向き、灰色の巨体は無数の皺が刻まれ、刺々しく数少ない体毛のひとつひとつが数えられるぐらいに近い。

夕暮れ時、多くのゾウが水を飲みにデルタに現れる

雄ゾウは耳をパタパタと動かし、長い鼻を左右にブラブラさせている。向こうもこちらを見ている。明らかに不機嫌そうである。ゾウを見るのは初めてではない。いままでアフリカの各地で見て来た。多い時には100頭を超す群れにも遭遇しきた。でもそれはいつだって安全な車の中や、ボートの上からで、またそこにゾウがいるとわかっている場所だった。でもいまは違う。手には頼りない薪木が数本あるだけで、あとは無防備そのもの。刺激しないように静かに後ずさり、ある程度の距離を離れた後、急いで野営地に戻った。

出会ったのが雄のゾウでまだ良かった。もし子連れの母ゾウだったらと考えると、ぞっとする。子を守るゾウは、必死である。アフリカでは毎年ゾウに殺されている人がいるが、その大半が子連れのゾウに近づきすぎたために起こっている。

夕方、モコロに乗り込みデルタに漕ぎだした。夕陽は世界を黄金色に染め上げ、ゾウの群れがデルタを渡る水しぶきの音だけがあたりに響く。バオバブの木がそのいびつな枝を夕空に伸ばし、そのそばでシマウマが群れて休んでいる。この何ともいえぬ美しい風景を、水面を滑るように進むモコロの上から眺めていると、オカバンゴでは水がすべてなのだと感じた。豊富な水は生き物たちの生命の源となり、湿地に溜まる水は人の侵入を妨げ、この動物たちの大自然を守り続けて来た。夕陽が地平線の彼方に沈む間際、ひときわ美しくこのデルタを眩しく浮かび上がらせた。その光景はあまりにも美しく、それは僕たち人間のためではなく、ここに生きる動物たちのための夕陽だったのだ、と思うほどであった。

この夜,僕はテントの中で、闇にまぎれてうごめく獣の気配を感じ、夜に響くハイエナのくぐもった鳴き声を聞きながら眠った。

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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