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Vol.22
ウガンダの未来たち
Newtopia , Uganda/ニュートピア・ウガンダ南部

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

ウガンダ南部のカクト村に小さな孤児院がある。ニュートピアと名付けられたその施設はエイズで親を失った子どもや、貧困のために子どもを育てられない家庭から預かっている子供たちが数十人、共同生活している。施設は質素で、ガスはなく料理は火をおこしかまどで行い、電気も停電ばかりで基本的には灯油ランプで夜を過ごす。病気や寄生虫の類いは日常茶飯事。僕が滞在していた時も、ボランティアスタッフの大半がマラリアに感染していた。

子供たちの朝は早い。朝6時起床。まだあたりは暗闇に包まれている。熱心な子どもはもっと早く起きて自習をしている。床を掃き、雑巾をかける。と同時に、かまどで火を起こし、朝食の準備をする。ここではすべて子供たちが自分で行う。誰も助けてくれないし、誰も手伝ってくれない。トウモロコシの粉をお湯に溶かした簡素な朝食のあと、朝礼があり、「Honesty(正直)」「Effort(努力)」「Responsibility(責任)」というこの孤児院の3大原則を大声で叫び、授業が始まる。授業は一日8時間目まである。授業が終わると、水汲み、洗濯、炊事、ヤギの放牧、畑仕事。休むまもなく働き続ける。日が暮れる頃、ようやく夕食。ウガリと呼ばれるトウモロコシやキャッサバの粉で作られる主食に、野菜と豆のスープ。育ち盛りの子供たちはウガリを大量に食べるけれども、それでも彼らにとっては栄養が少ない。みな身体が小さく発育が遅く、実際の年齢よりも2~3歳は小さく見える。食後、歯磨きが終わったら、自習の時間である。灯油ランプの揺れる炎に照らされて、子供たちが積極的に勉強をする。その様子を見ているとその勉学意欲に驚かされる。そして、夜10時、消灯、就寝。一日がようやく終わる。

未来を見据える少年。将来この瞳に何が写るのか

ニュートピアは不思議なところである。何か子供たちの役に立てないか、手伝うことはないか、彼らを助けることはできないか、何か教えることはないか、と思って行ったけれども、滞在を通じてできたことなんて何もない。逆に、子供たちに助けてもらい、いろんなことを教わったのはむしろ自分の方だった。

親を亡くしたり貧しい家庭に育ち親がいない状態で暮らしている子供たちこそ寂しさを感じているはずなのに、彼らの共同生活の日々に接しているとなぜかこちらのほうが寂しい存在のように感じてくる。僕には彼らのように共に未来を見据えて生き、一緒に成長して行く仲間が、もはやこの年齢になるといない。また、自分たちが生きるすべてのことを自分たちだけでこなし、その上で勉強に励む彼らを見ていると、自分が彼らに比べてどうしようもなく怠惰で子どもであるということを感じずにはいられない。すべてが逆なのである。価値観が逆転してしまう。

もっとこの孤児院について語りたいことがたくさんあるのにも関わらず、何を伝えればいいのかがわからない。きっとこの施設で子供たちと一緒に過ごさなければわからないことがたくさんあるからなのだと思う。自分にできることはあまりないのかもしれないと6日間の滞在を通じて感じた。子供たちに何かをしてあげることができると思うのは、それは一方的な哀れみと薄っぺらな善意の押し付けでしかないかもしれない。僕らは彼らの生き方を知り、そこから何かを学び取り、それを自分の人生の生き方に取り入れること。また遠くはなれた世界にいても彼らの生活のことを心の片隅に持ち続けること。この孤児院を通じて僕らがすることは、与えるよりも、与えられることの方が多い。

彼らは果たしてこれからどのように成長して行くのだろうか。とても気になる。できれば一年後、数年後にまた訪れてみたい。彼らは本当に眼に見えるスピードでぐんぐんと成長していっているのである。彼らの眼は、将来何を見て、彼らの手はそこで何を生み出すのだろうか。そこにどんなウガンダの未来が写っているのだろうか。その世界を見てみたいと思った。彼らはウガンダの未来たちなのである。

ニュートピアを去る日、小さなナミガッデにお別れを告げると、彼女は「Uncle Uruma, Don’t go. Stay with me」とか弱い声で言った。僕はナミガッデの小さな身体を抱きしめ、その暖かさと柔らかさを感じながら、ありがとう、と答えニュートピアをあとにした。

Newtopia

ニュートピア代表の日本人カマウさんが運営する孤児院。カマウさんはこれまでケニア、ウガンダの孤児やストリートチルドレンのサポートをして来た。その大半が自分で日本で出稼ぎをして貯めたお金で行っている。その運営、教育方針も独特で、真剣にウガンダをはじめアフリカの未来を、子供たちの教育を通じて変革しようとしている。

代表の考え、施設の内容、ボランティアスタッフの募集、支援金の詳細、その他詳細はこちらまで→http://newtopia-academy.com/

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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いま、世界一周の途中。

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