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Vol.8
火花の踊り手たち
Cusco, Peru(クスコ・ペルー)

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

 ペルー・アンデス山脈の古都クスコからおんぼろバスに乗り込み、パウカルタンボと呼ばれる山間の小さな村に向かった。バスは黒煙を吐き出しながら、断崖絶壁を走り抜ける。車幅は車一台分しかなく、未舗装。おまけにガードレールなんて気の利いたものはおろか、崖側には盛り土さえない。その道をバスは何を急いでいるのか、猛スピードで走り抜ける。いつ落ちるのかとヒヤヒヤすること5時間以上。なんとか無事にパウカルタンボに到着した。パウカルタンボを訪れた理由は、祭り。この日、この小さな村でママチャ・カルメンと呼ばれる祭りがある。

祭りの踊り手たちだろうか、赤、緑、黄色など色鮮やかな羽飾りをつけた民族衣装を身にまとった人々が道ばたで談笑し、屋台ではまるまると太ったインディヘナのおばちゃんが豚肉を大きな固まりごと大鍋に放り込みグツグツと煮込んでいる。うまそうだ。空腹を誘う匂いがあたりに漂い、それに釣られて祭りの前に腹ごしらえをする見物客たち。あたりは既に祭りの予感に満ちた空気に溢れている。やがて街を二分する橋の向こう側から、独特の音楽が聞こえ始めたかと思うと、仮面をかぶった踊り手たちが次々と橋を渡ってきた。踊り手たちはまるで何かに憑かれたように一心不乱に激しく踊り、うっかり近づいたりするとはね飛ばされてしまう。

アンデス山脈の日暮れは早い。陽が稜線にかかったかと思うと、すぐにあたりは暗くなり寒くなる。と同時に、ママチャ・カルメンはこの日最大の盛り上がりを見せ始める。踊り手たちが何やら藁をたくさん集め始め、点火。そして木の枝のようなものをかかげ始め、藁の火に近づけると激しい爆音とともにその枝が火を噴き始めた。火薬が仕込まれているのだ。50人はいようかという踊り手たちは次から次へと火を噴きながら広場を走り回る。見ているものは飛び散る火花に逃げ惑い、騒然としている。すると今度は5mほどの高さの木造のやぐらが登場した。何が始まるのかと見ていると、そのやぐらにも点火。瞬間、やぐらは巨大な火花の固まりになった。踊り手たちは飛び散る炎を背に狂ったように踊り続けていたが、やがてやぐらはバランスを崩し、観客めがけて横転。それでも火花を散らし続け、踊り手はますますその動きの激しさを増す。僕は夢中で写真を撮り続けた。

翌朝、昨夜着ていた服を見ると、火花を浴びて無数の小さな穴が空いていた。おまけにまぶたをやけどする始末。この祭りを僕は初めて見たが、毎年行われているという。アンデスの山奥でこれまで人知れず長年行われていたのかと思うと、不思議な気持ちになった。

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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