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Vol.6
キューバを愛した瞬間
La Habana Vieja , Cuba(キューバ)

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

ハバナの旧市街。スペイン植民地時代にサトウキビの栽培、輸出で栄華を誇ったコロニアルの建物は時を経ていまは黒ずみ、壁が崩かけているものが大半であるのにもかかわらず、そこには悲壮感や喪失感を感じさせる雰囲気はなく、人々の陽気な笑顔が溢れている。
そのハバナの旧市街を歩いていると、サルサ、ルンバ、ソン、ジャズ、さまざまな音楽が至る所から聞こえて来る。音楽に引き寄せられて建物の窓から中を覗き込むと、キューバの人々が演奏しながら踊っている。目が合うと笑顔で“中に入っておいで”と誘ってくれる。次から次へと音楽を中心に人々が集まり始め、はじめは数人だったはずなのに、気がつけば数十人が集まり、音楽はますます力強さを増し、踊りは弾けるように激しくなり、人々は笑顔に包まれている。このような光景は旧市街では日常茶飯事で、僕は連日、街中に溢れる音楽を頼りに歩き回った。

滞在中のある日、カジュホン・デ・ハメルと呼ばれる小さな広場で、ルンバグループによる路上ライブがあった。100人ほどの人々が集まり、音楽が始まるのを心待ちにしていた。その中にひとりの少年がいた。彼は重い障害を持っていて、母親に寄り添いながら目の焦点が合わぬ放心状態のような様子で静かに座っていた。しかし、音楽が奏でられ、人々が踊り始め、あたりが音楽のエネルギーに満ちてきたところ、それまでずっと身動きひとつしなかったその少年がすっと立ち上がり、踊り始めたのである。体を自由に動かすことができない少年のその踊りはぎこちなく、体は苦しそうに見える。でも表情が全くなかった彼の顔には、そのとき満面の笑みが溢れていた。それを見ていたまわりのキューバ人は彼の踊りを歓迎し、音楽がさらに激しさを増しライブはさらに盛り上がって行った。

キューバの人々が奏でる音楽の中には、とても大きなエネルギーが込められている。そのエネルギーは強烈に聞く人々の心の奥深くまで届き、僕の心の中も、その少年の心の中も大きく揺さぶられたのであった。結局キューバの音楽に魅かれて、予定を大きく延長して2週間以上この国に滞在することになったのだが、この少年の踊りと笑顔が最も印象的な出来事であり、キューバという国を心から好きになった瞬間であった。

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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いま、世界一周の途中。

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