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Vol.22
歓喜! レギュラードライバー3人による優勝!

Faust Racing Team(以下Faust RT)が、アマチュアドライバーだけでプライベートチームを立ち上げて5年。無謀とも思えたチャレンジも、ドライバーのスキルアップとともに「レースを戦う」とういう形になってきた。2012スーパー耐久第4戦、プロドライバーの助けなしで初めて勝ち取った優勝。その模様をレポートする。

久しぶりのレギュラーメンバー





スーパー耐久2012シーズンは全6戦。後半戦のスタートとなる第4戦が、岡山国際サーキットで開催された。シリーズ初戦、3月の富士以来、久しぶりに堀/佐藤/岡本の3名が揃い、レギュラードライバー3名による戦いとなった。

Faust RTの軌跡を、年ごとの最高位であげれば、初年度が17位、2年目10位、3年目6位、4年目と今年がそれぞれ優勝だ。アマチュアドライバーが集い、手探りで始めたチームとしては文句のつけようのない成績だが、それでも足りないものがあった。優勝2回はそれぞれプロドライバーが参加してのもの。レギュラードライバー(アマチュア)だけでの優勝がなかった。

マシンを戦闘力のあるBMW Z4に変え、堀/佐藤/岡本をレギュラードライバーとした新チームがスタートして今年は2年目。それなりの結果も欲しい。個々のドライバースキルが進境著しい今、この岡山がレギュラードライバーの実力を問う絶好の一戦となるはずだ。岡山から復帰の佐藤は初戦以来久々の登場、5ヶ月ぶりのレースで実戦感はどうなのか?気になるところだ。

ここ岡山はテクニカルなサーキットとして有名。コース幅も広くはなく、連続するコーナーでは走行ラインも限られる。運悪く周回遅れにかかると大きくタイムをロスするコースで、6クラス混走のスーパー耐久では、パッシングのテクニックが問われるサーキットだ。抜きどころで躊躇すればタイムを落とすし、不用意に抜きにかかればリスクを冒すことになる。3人のレースぶりにも注目が集まる。

順調な仕上がりのフリー走行

「2012スーパー耐久」シリーズ全体の流れを振り返れば、初戦が3位、2戦目を優勝、3戦目を2位として、ランキング2位につけていた。首位とのポイント差はわずか1である。当然ながらシリーズチャンピオンも狙える位置。が、ここでポイントを離されてしまえば、残りのレースがきつくなってしまう。もちろん優勝がベストだが、ノーポイントでは終われない。

レースは土曜予選、日曜決勝の2DAY開催。ドライバーでは佐藤とセッティング担当の山野直也が木曜からレース場に入った。山野は週末に別のレースが控えているため木曜だけの参加だ。すでに全日本ジムカーナーPN3クラスのチャンピオンを決めた山野。昨年のもてぎで見せつけた速さは本物で、今年はドライバーとして多方面で忙しく活躍している。

そして、Faust RTの走行会イベントにいつも駆けつけてくれるGTドライバーの千代勝正も、今回の岡山にやってきた。スーパー耐久第3戦ではFaust RTドライバーとして参戦したが、今回はGT3クラス、近藤真彦率いる日産自動車大学がエントリーするGT-Rのドライバー。優勝請負人としての重責を背負っている。ピットが隣ということもあり、山野に代わってアドバイスもしてくれる。

金曜日、ドライコンディションで行われたフリー走行では、3名のドライバーがそれぞれ1分40秒台を出し、好調さをアピール。昨年のラップや他チームとの比較でも、明日の予選は勝負になるはず。久々で心配された佐藤も、「思ったより走れている、意外に忘れていない」と、スタッフを安心させてくれる。ニュータイヤでの予選は、40秒を切るだろうし、できれば38秒台でポールを争いたいところだ。

予選

トップを狙うが、惜しくも0.19秒及ばず

土曜日の予選は13時スタート。気温は32℃、路面温度は52℃と高い。目標ラインは1分38秒台。Aドライバー+Bドライバーの合計タイムで争う予選にも、シリーズポイントが1ポイント加えられるため、力も入る。予選アタックは5年連続で岡山に出場する堀と佐藤だ。





Aドライバーの堀が、予選スタート開始と同時に飛び出す。アタック1周目に1分39秒266。1周目から目標タイムに近い時計。2周目はセクション1を自己ベストで更新するが、その後トラフィックにつかまりアタックを中断。ニュータイヤのおいしいところが生かせるのは数周しかない…。3周目1分39秒079、そして4周目、自己ベストとなる1分38秒715で目標をクリアした。

予選を終えた堀は、「車載では36秒台を表示してたから驚いたけど、まぼろしだったみたいね」と残念そうな顔。表示トラブルの原因は不明だが、それほど走りに手ごたえもあったのだろう。タイムも直接のライバル#3フェアレディZ/GTドライバーの峰尾恭輔から0.4秒落ちなら大いばりだ。

予選2番手は佐藤。8月にカート練習でスピンして肋骨を痛めたものの、なんとか出場が叶った。課題としていた最終セクションもフリー走行で手ごたえを感じているようだ。気温、路面温度ともさらに上昇する中、アタック1周目に1分39秒257、2周目に予選自己ベストの1分38秒971を叩き出した。

ライバルの#3フェアレディZが4周目に1分39秒台を出し、合計タイムでは#9 Faust RTを上回った。佐藤も必死にタイムを詰めにかかるが、再度38秒台には入らない。#3もアタックを続けるがその順位は変わらず。両ドライバーの合計タイムでわずか0.192秒及ばず、予選は2位となった。

C予選、岡本が
まさか!のコースアウト

Cドライバー予選は予選順位とは関係なく、基準タイムをクリアすればよいもの。Faust RTドライバーは基準タイムを出せるため、アタックする当人のモチベーションが鍵となる予選だ。あくまで完熟走行としてウォーミングアップするか、なんらかの課題をもって望むかである。

岡本は後者を選んだようである。アタック1周目で早々と1分39秒台を出し、予選基準を楽々クリア。ところが開始7分過ぎに、コース上にオイルが出たため赤旗中断が起こる。完熟走行目的ならマシンを降りただろうが、ピットに戻ってきた岡本はマシンに乗ったまま。赤旗解除になれば走る気だ。

予選再開後のアタック1周目、ストレートエンドから続く1コーナー。岡本は曲がりきれずコースオフ。スピンこそしなかったものの、コース外を走ったため砂利を巻き上げた。すぐにピットに戻ってきてマシンを点検したところ、ホイールは内側を砂利で傷つけ、使い物にならなくなってしまった。マシンの下周りもブレーキをはじめ点検が必要だ。

ピットに帰ってきた岡本は、
「いつもと同じところでブレーキを踏んだけど止まらなかった」
堀「やめとけっていっただろ~」
岡本「オイルを拾った経験ないんだから」
堀「そんな問題じゃないだろ」
チームキャプテンの堀が、メカニックの怒りを代弁するような形で岡本をいさめる、キャプテンとしては放ってはおけない。

この予選直前にFaust RTのレースクイーンが熱中症で倒れ、医務室に搬送されている。メカニックにとって蒸し暑いピット内での作業は、「余計なことをしてくれた」が本音。一人のメカニックから岡本に「焼肉ごちそうさま~」の声が出る。これで場はなごんだ。

落ちこむ岡本だったが「決勝でなくてよかった」とあくまで前向き。内心は相当凹んでいたかもしれないがそれを見せない頑強さがある。明日も間違いなく暑い。真夏の3時間耐久、何が起こるかは誰にもわからない。大きなトラブルに至らなかったことに感謝して、明日に備えた方がよい。

決勝

第3戦と同じく1周目から波乱を呼ぶ展開

8月26日(日)、決勝当日朝のフリー走行。8時30分だというのにすでに気温は28℃。午後からの3時間耐久レース決勝が、マシンにもドライバーにも過酷なものになるのは確実だ。



フリー走行はアウト-2周-インで、ドライバーはスタート順と同じ。合わせてドライバーチェンジやタイヤ交換の練習も行う。ドライバーは古タイヤで、それぞれ42秒~43秒台で肩慣らし。最後の堀だけは残り時間をフルに使い、周回ごとにタイムを上げ1分39秒台と気を吐いていた。

このレース、ライバルとなるのはポールスタートの#3フェアレディZ、ポイントリーダーだ。もう1台は今レースから参戦した#51のBMW Z4。マシンが同じだけに油断はできないが、ST-1クラス初出場となる今回は様子見のようだ。その予選グリッドは10番手。

いよいよ決勝のスタート。気温は32℃を超えた。
Faust RTはスタートドライバーを佐藤が務め、岡本―堀の順で均等にスティントを消化するプランだ。スタート5分前、メカニックを含める関係者が全員退場、そして1時20分ジャスト、1周のフォーメーションラップが始まる。3分ほどかけてゆっくりとコースを周回。ストレートに戻ってきてレースがスタート、6クラス全43台が一斉にアクセルを全開にする。

佐藤は、前を行く#3フェアレディZをインに見ながら1コーナーをクリア、無事にスタートをこなす。後続する隊列も大きな接触なくスタートを切ったものの、バックストレートで3台のからむ多重クラッシュが発生し、コース上にパーツが散乱、マシンも止まってしまった。

このため初周からいきなりのセーフティーカー(以下SC)導入となった。前戦のSUGOと同じ展開だ。前日から、「勝ちにいく」と公言していた#3フェアレディZは、次周にピットイン、ドライバーチェンジだ。順位はいったん落とすが、義務付けられている2回のドライバーチェンジの1回をこなすことでタイム・アドバンテージを得る作戦だ。

#3の作戦は残り時間を考えれば1人あたりの周回数が増え、タイヤへの負担増と燃費の問題も生じるが、前戦を見る限りでは計算済みなのだろう。死角といえばエースドライバーの峰尾が1周で降りたことと、その後のSC導入があれば、計算された作戦だけに、展開面での幅がなくなることだろう。

Faust RTは前戦同様に今回もそのまま佐藤にハンドルをゆだねる。まだレースは序盤、佐藤も1周で終わりはたまったものではないだろう。もちろん過酷な条件化でのレース展開を睨んでのステイだ。

そうはいってもピットインするチームが10チームを超えた。前回のSUGOでは、その後スンナリとレースが流れ、SCの間にドライバーチェンジをしたチームが上位進出したからだ。佐藤は「交代も覚悟した」とレース後に話したが、予選から好調な佐藤を降ろす決断はチームにはなかった。

コース上の処理に5周、15分近くが費やされ、6周目にレースが再開される。#9 Faust RTはクラストップ。ピットインした#3は後方43秒だ。



佐藤の役目はタイム差を詰められないこと、ピットイン回数を考えれば、その差を逆に広げたいところだが、相手#3のドライバーはGTドライバーの高木真一。容易でないことはわかっている。

佐藤のペースはスティント序盤が40~41秒台、中盤を41秒台、後半を42秒台。トラフィックがあっても43秒台をキープ。そのため#3とのタイム差は38~40秒を常に保った。昨年はオーバルでこそ真価を発揮した佐藤だが、ロードコースでは調子が上がらなかった。今回は終始安定したラップで速い。終盤のタイムの落ち込みもなく、トラフィックにも対応している。

そんな佐藤の激走があって33周目、ちょうど1時間を過ぎたところで、1回目ルーティンのピットイン。ドライバーチェンジと給油、タイヤ交換を行う。ピットストップ時間57秒。昨年の岡山より約7秒速い。

セカンドドライバーの岡本がコースに出る間にトップに立ったのは#3、その差は約50秒。どちらもドライバー交代は1回だから。この差を残り2時間で詰めて、追い越さなければ優勝は見えてこない。

その岡本、アウトラップの次周、最初のタイム掲示で、いきなり1分40秒587というハイラップを叩き出した。ニュータイヤとはいえピット側は騒然。。「昨日のことで火がついたのかな」と話す者もいる。#3のレースラップは42秒~43秒台。このまま毎周1秒詰めていけば、きわどい展開になるはずだ。

しかし、そこまでは甘くなかった。岡本もタイヤがフレッシュな序盤こそ41秒台を連発したが、コース上の荒れは前日までの比ではなく、スティント中盤から後半は42秒~43秒台。前を行く#3とラップタイムが合ってしまった。#3との差は45秒。スティント中盤でピタリとタイム差は固まった。

そしてレース開始後1時間40分過ぎ、56周目に#3 フェアレディZが最後のピットイン。ドライバーが谷口行規に代わる。スティントが長いためか燃料補給時間も長く、ピットタイムでは数秒Faust RTの方が速い。

#3がピットインする間にFaust RT #9岡本が再びトップに立つが、その差は約46秒。Faust RTにはあと1回のピットインが残されている。前回SUGOと同じ展開だが、違いは、佐藤、岡本のがんばりにより差を広げられていない点。SC導入によるタイム差のみ。相手に与えるプレッシャーも違うはずだ。

そしてラスト堀での逆転ドラマ

65周目、岡本は予定のピットイン。堀のスタートはクラッチが繋がらず渋い出足だったが、ピットタイムは1分ちょうど。素早さは変わらない。このピットインの間にトップに立った#3との差は43秒。前回SUGOでは1分差だから追撃のチャンスはある。

堀は荒れたコースの中、序盤から41秒台を連発、中盤までそれを維持した。80周目には#3との差を5秒詰め、38秒差とした。しかし、残り時間は35分を切り、あと約20周。レースアクシデントが起きなければさすがにキツイ展開になってきた…

82周目、コース脇でチームの撮影をしているカメラマンから電話が入る。「フェアレディZが異音を出してる」。その直後、場内放送が#3の異常を告げる。緊急ピットイン、駆動系のトラブルのようだ。メカニックが忙しく動き、再スタート。

その間にストレートを#9 Faust RTのBMWが駆け抜ける。逆転トップだ。しかも次周、#3は再びピットイン、なかなかスタートしない。#51のBMWはすでに4ラップ以上後方。ピット内ではガッツポーズがはじける。相手の不運を喜ぶのではない、こちらに傾いた勝利の女神への拳だ。

From Faust A.G. Channel on [YouTube]

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残り20分、再スタートしない#3と十分な差が開いたところで、ピットから堀にペースダウンの指示がでる。ラップを42秒~44秒台へと落とす。さらに残り数周となったところで、コース全周にオイルフラッグが出る状況になった。追加のペースダウン指示。目の前にあるのはチェッカーフラッグだけ、3時間の劇的ドラマがエンディングを迎えた。

念願だったレギュラー3名での優勝が現実に!

昨シーズンの優勝は佐藤と山野のコンビであげたもの。今シーズンの優勝は堀、岡本、山野であげたもの。どちらもプロである山野が入っていた。レギュラードライバー3名はそれぞれ自分のドライビング機会で優勝経験はあるものの、3名揃っての優勝は今回が初。

ゴール後のピット、表彰台は、これまでの優勝とは一味違う喜びようだった。Faust RTレギュラードライバーだけでの初めての優勝。5年間の努力と、それに伴うレースでのスキルアップが、結果として「優勝」という大きなプレゼントをくれたのだ。

各ドライバーのレース後のコメント

胸のけがをおして出場した佐藤。予選、決勝ともに著しい進境
「カートでケガした右胸は痛まなかったけど、かばっていたせいか腰が痛くなった。決勝レースは最後に展開が向いたけど、それがなくても次に繋がるいいレースができていた。去年は情けないレースもあったけど今なら十分に戦えますね」

予選でチームに迷惑をかけた岡本。決勝ではラップを見事にまとめた
「決勝日のコースは金曜日からの3日間で一番条件が悪かった。その中で1分40秒は出せたけど、タイムを上げていくのは無理と判断して、トラフィックの中でタイムを落とさないよう、クラス下のマシンを抜くのに全力を出しました」

レギュラードライバー3人での初優勝を喜ぶキャプテンの堀
「決勝は1周1秒詰めようと走ったら、初周から飛び出しそうになってキツかった。その後は冷静に走ることができたけど、後半は飲み物はなくなるし、路面は悪くなるしでしんどかった。今年はあと2戦、最後までいいレースをしたいですね」

チーム監督の志村は「意外にドラマはあるね~」とレースを振り返った。その言葉通り、残り周回わずかでのドラマチックな展開。いままで、どちらかといえば「運」という面では見放されていたが、チームの実力アップとともに「運」も味方につけてしまった。5年間あきらめずに続けた努力が勝利を呼び込んだのだろう。今シーズン2度目の優勝でシリーズポイントトップに躍り出たFaust RT。次戦は10月20/21日の鈴鹿だ。

 

 

Data

OKAYAMA International Circuit
2012.08.26/Course Length:3,703Km
Weather:Sunny/Course:Dry
Faust Racing BMW Z4M COUPE
Driver佐藤 茂/岡本 武之/堀 主知ロバート
3h01'16.867 100LAP
ST-1クラス優勝

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