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Vol.20
初の予選トップ! そして2度目の優勝
 

昨年後半から着実にチーム力を上げてきたファウスト・レーシング・チームは、2012シーズン第2戦となる「もてぎ4時間耐久レース」を、予選トップからスタート。レース終盤、トラブルを抱えながらも後続に1ラップ差をつけ優勝。チーム結成以来、ロードコースでは初めての表彰台中央に上がった。その模様をレポートする。

1日目―練習走行

レギュラードライバーの佐藤が決勝を欠場



2012スーパー耐久シリーズ、第2戦の舞台は「ツインリンクもてぎ」。レースコースが開業して節目の15年となる今大会は「15 th Anniversaryレース」として、盛りだくさんのイベントが用意された。子供の観戦料金が無料の上、ゴールデンウィークと重なったこともあり、家族連れも多く、例年以上に華やかな大会となった。

Faust Racing Team(以下Faust RT)はシーズン初戦を3位完走で終え、着実にポイントを獲得。レース中にチームを悩ませたオーバーヒートの原因はガスケットのわずかな亀裂と判明し、エンジンをオーバーホールしてこの第2戦に臨んだ。

金曜日に行われたフリーセッションは雨で路面はウェット。週末の天気は晴れ予報だったため、Faust RTは、雨脚のひどくなった最終セッションを早く切り上げた。この日、主にマシンに乗り込んだのは、都合がつかず決勝レースを走ることのできない佐藤だった。
マシンの感触を聞くと佐藤は、「コンディションはいいですね、予選、決勝はがんばって優勝してほしい」と、チームにエールも加えた。

このためレースドライバー3名は、レギュラーの堀と岡本に加え、Faust RTのコーチ役を務める山野直也。山野はブレーキメーカー「プロジェクト・ミュー」の開発ドライバーで、昨年のもてぎでは、オーバル予選でコースレコードを更新、レースでもFaust RTを優勝に導く立役者となった。今レースの前週に行われた全日本ジムカーナー第2戦PN3クラスでは、インプレッサWRX STIで優勝、勢いにも乗っている。

Faust RTが参戦するのはカテゴリー/ST-1クラス。ライバルとなる2チームの体制は今回も強力だ。
#25ポルシェは、スーパーGTを主戦場とするプロドライバー土屋武士に、伊藤真一というMoToGPの世界選手権ライダーと渋谷彰良という若手のプロ。
#3フェアレディZは、同じくスーパーGTが主戦場のプロドライバー峰尾恭輔に、WTCCでも経験豊富な谷口行規と、高木真一というGTで活躍するドライバーだ。
いずれのチームも、全員プロ、それも第一線級がひっぱるハイレベルな体制である。

対する、Faust RTは、ドライバーの組み合わせだけを見ればプロ1人+アマ2人という体制。プロアマ混走で「スーパー耐久らしい」とはいえ、今回も予選・決勝は苦戦・激戦が予想された。

2日目―予選

100分の1秒差で予選ポールを獲得!

4月28日(土)、予選。天候は晴れ。金曜日の練習走行が雨だったため、午前中のウォームアップ走行が初めてのドライコンディション。セッティングを確認するため山野がトップで、岡本、堀と続く。わずか45分、周回数でいえば一人4~5周だが、4時間後に行われる予選アタックに向けて、張りつめた時間だ。



Aドライバー+Bドライバーの合計タイムで決する予選は堀と山野のドライブ。まず、Aドライバーの堀がアタックを始める。計測1周目に2分2秒台、続いて1秒台、区間タイムをベストベストで詰め、わずかずつだがタイムを上げていく。そして、アタック5周目に2分01秒183の自己ベストをマークした。対する#25ポルシェ、#3 フェアレディZはエースドライバーが乗車し、それぞれ1分58秒780、2分01秒507がベスト。現時点で2位、トップ#25とのタイム差は2秒404だ。 #25ポルシェのBドライバーは二輪の元世界GPライダー伊藤真一。鈴鹿8耐でもポール7回、優勝4回と耐久経験も豊富。四輪レースは趣味とはいえ、インテグラでスーパー耐久の優勝経験もある。

Bドライバー予選。山野は、アタック1周目に1分58秒499、2周目に1分58秒853。ニュータイヤで一番おいしいところを使ったため、これ以上タイムは伸びないと判断、しばらくはペースを落として周回する。#25の伊藤も好タイムだ。ピット内では急いでタイム計算。100分の1秒ほど#25を上回っているはずだが、場内放送では逆(#25がトップ)を言っている。どちらにしろ相手が残り周回で自己ベストを上回れば、Faust RTの予選1位はなくなる。

堀が自ら無線のヘッドセットを取り「降りるな、プッシュしとけ!」と山野に激を入れる。ピット内モニターに表示されるライバルチームのタイム掲示に全員が注目する。#25伊藤も山野と同じようにアタック1周目がベストで、そこからタイムは伸びない。計測1周目に自己ベストを持ってくるのはさすが元GPライダーともいうべきだろう。

ピット内では計算をやり直す。間違いなく1000分の14秒差でポールポジションだ。わずか100分の1秒ほどの差。初戦の富士では10分の1秒差で予選2位を逃がしたが、今回は100分の1秒差で予選1位。ボーナスポイントも1Ptゲット。チーム結成5年目の「初」快挙に、ゲストも交えて大喜び。笑顔が溢れた。

続いて行われた予選3本目は基準タイムをクリアすればいいCドライバー予選。無難なペースで走行してもいいのだが、岡本がもてぎロードコースを走るのは4年ぶり。ある程度タイムを出さなければ決勝にかける周りの期待がしぼんでしまうのはわかっているはず。自身のレベルも確認したいところだ。

堀、山野と同じくニュータイヤだったので、目標タイムを2分1秒台後半に設定、コースに出る。計測1周目に2分3秒台とした岡本は、図ったように毎周0.5秒ずつラップを詰め、4周目には2分01秒617と、目標タイムをクリア。その後も01秒後半から、2秒台でまとめ、20分の予選時間を走りきった。

掲示タイムを見ていた堀は「光が見えてきたね」と喜ぶ。もちろん決勝への手ごたえを感じたということである。山野一人が速くても結果を残すことはできない。ドライバー3人の力を合わせなければ、4時間の長丁場を戦えないのだ。

予選終了後、各クラス1位チームを集めて行われた記者会見では、
堀「苦節5年、初ポールなのでみんなで喜んでいます。メカニックががんばってくれてクルマの仕上がりもよく、ドライバー3人もタイムが出せているんで熱いバトルができると思います」と胸の内を明かした。

この日は記念大会のスペシャルイベントとして子ども記者のインタビューも行われた。「決勝レースで注意することはなんですか?」の質問に、堀は「今晩ビール飲み過ぎないことですね」と返し、子どもたちも声を出して笑っていた。

3日目―決勝

勝つために練られたレースプラン

4月29日(日)決勝。朝は薄曇りながら、決勝レースの始まる午後の予報は晴れ。予選日より気温、路面温度とも上昇しそうだ。午前中のフリー走行は、決勝スタート順と同じで堀→岡本→山野。ドライバーチェンジ練習や、タイヤチェンジ練習も、いつも通りの光景だ。ドライバーチェンジも慣れたもので、慌てる様子はない。












フリー走行が終わると、決勝スタートまではイベントタイム。この日のスーパー耐久には日産GT-Rが近藤真彦監督のもと戻って来た。スーパー耐久では過去に何度も優勝し、このレースを盛り上げる主役級のマシンだ。そのお披露目に加えて、GT-Rクラブのデモ走行や、懐かしの名車のデモンストレーションラン、恒例のピットウォークなど、瞬く間に時間が過ぎていった。

Faust RTのレースプランは堀→岡本→山野→山野の4スティント。通常4時間のレースを3名でドライブするのであれば、3スティントが一般的だが、燃費やタイヤグラデーション(タイヤのタレ具合)、ピットイン時のロスタイムを考えた上での判断だ。

タイヤ交換は山野にチェンジする時の1回のみ。S耐ではセンターロックのホイールが使えないため、4本全部のタイヤを交換する場合、それだけで40~50秒のタイムがかかってしまう。もてぎのピットロードは他コースに比べ短くタイムロスが少ないこと、BMW Z4とヨコハマタイヤとの相性を考えての作戦だ。その通り運ぶかは、レースデータの少ない現状では、神のみぞ知る…だが。

決勝のスタートドライバーは堀。後ろにいるのはプロドライバーの土屋と峰尾。そのことについて監督の志村に聞いてみると、「弱気だとレースなんかできないでしょ、その点、堀は平気だよ」と明言。堀もレース後「スタート前は緊張したけど、マシンが動き出したら忘れた」というぐらいだから、周りが心配する必要はなかったということだ。

12時30分、ローリングラップスタート。1周4分かけて、先導車が引っ張る中、各車タイヤを暖めながら準備する。直線を向いてシグナルグリーンでスタート。GT3クラス4台、そしてST-1クラストップの堀が、ポジションを守って1コーナーへ。#25ポルシェは直後だが、#3フェアレディZはスタートで加速せず、ST-2クラスST-3クラスに交わされ後方へ。

1周目、2コーナー。堀の後ろにいたポルシェは、その立ち上がり加速であっという間に堀のインに。3コーナーでは並ぶ間もなく交わされてしまった。初戦富士でのポルシェの速さは並ではなかったが。ここ、もてぎでもそのスピードは強烈。コーナリングマシンのZ4とは対照的な性格だ。

今回、堀はブレーキ、タイヤの使い方に課題を設けていた。昨シーズンのもてぎロードコースではブレーキ、タイヤを酷使してスティント後半に極端にタイムを落としたため、今レースでは、そのマネジメントを心がけた。もてぎロードコースはブレーキに過酷なサーキットとして知られている。ブレーキパッドは交換することのないよう最後まで、タイヤは山野につなぐまで、考えた走りをしなければならない。

といっても堀は、やすやすと#25ポルシェに離されるわけにもいかない。マシンをいたわって乗りながらもスティント序盤を2分02秒台、中盤を03~04秒台、後半を04~05秒台でまとめ、#25土屋がドライブするポルシェから毎周回、1秒から2秒落ちの範囲でとどまった。

13時25分、26周目。他チームに先がけて、予定のピットイン。ドライバー交代と燃料補給のみ。作業時間は約40秒。素早い。場内放送は「タイヤ交換なしです」とBMW Z4のバランスの良さを強調する。

堀はピットイン直前で、先行する#25ポルシェとは約40秒、後方の#3とも約40秒差。#3はミッションに問題があるらしく遅れているようだ。

岡本、スティント最終周でトップに!

バトンを受けた岡本は、そのアウトラップでスピン。「問題なし」との無線は入ったが、後で詳しく聞いたところ、高速コーナーの130Rでスピンしてマシンが1回転。ちょうど進行方向を向いたので、そのまま再スタートしていた。岡本らしいといえばそれまでだが、一歩間違えばインラップでスピンした昨年富士の二の舞になるところ。

続いて岡本はバイブレーションを無線で伝えてきた。ニュータイヤからのスタートでない岡本にとっては、感じるすべてが初めてといっていいい。タイヤが限界なのか? フラットスポットがあるのか?ピット側も判断に迷うところだが、ラップタイムはトラフィック時で2分06~8秒台、クリアで2分05秒台を持続的に維持。そこそこのタイムが出ているので、そのまま走ることになった。岡本は残り20数周を未知の不安の中、山野につなげなければならない。

スティント後半、スタート後1時間30分を経過したところで、ライバルチームもピットインしてドライバー交代を行い、そのタイム差がハッキリ見えてきた。前を行く#25ポルシェとは約1分の差、後ろの#3フェアレディZとも約1分差。

48周目、ここで#25ポルシェがタイヤ交換のため緊急ピットイン。ドライバーは直前に土屋からCドライバーに変わっているため予定外のもの。これでその差14秒と一気にタイムが詰まった。

51周目、「#25の左リアフェンダーが破損、スローダウン」の場内放送が…。ホイールナットのゆるみが原因でフェンダーを痛めたらしい。スローダウンした#25を、岡本はビクトリーコーナーでパス。ついにFaust RTの#9 BMW Z4がトップに躍り出た。

53周目、スティントを終え戻って来た岡本、
「スピンのタイムロスは5秒くらいでしょ」と笑顔。反省すべきところを蹴飛ばす明るさが岡本には似合っている。終わったことは終わったこと、信頼を取り戻すには、落胆ではない。

時折、遅いラップがあったことについて岡本は、
「タイヤの状態を考えると、クラス下のマシンを抜く時にリスクを取れなかった。アウトから抜いてタイヤカスを拾ったりするとヤバイし、優勝の可能性がある以上、安全に抜きにいった」

2スティントを走って外されたタイヤは、アウトサイドのラバーが剥がれ、ワイヤーが見える状態。メカからは「よく走ったね岡本ちゃん」と、我慢の走行をした岡本をねぎらった。ハードな役割は十分過ぎるほどこなしたのだ。

「ガス欠?」決勝後半、予想外のトラブル発生!

山野にドライバーチェンジした時点での順位はクラス2位。前を行くのは#3フェアレディZに変わった。その差は8秒。ただし、#3はルーティンのピットを1回終えただけなので、次のピットストップでは、給油、タイヤ交換、ドライバーチェンジが必要。対する山野は給油のみ。トラブルの出た#25は後方で約1分差。こちらも最低1回の給油は必要になるはずだ。Faust RTの現在順位は2位だが、実質トップということになる。



56周目には前を走る#3フェアレディZをパス。これで「実質」ではなく、リアルにトップだ。もちろん先頭になったことでピット内は一安心。「ヨッシャ~!」の元気モード。

山野のレースラップは2分01秒台~02秒台と速い。周回を重ねてもタイムが落ちていかず、後続との差をどんどん広げていく。このままレースが順調に進めばという仮定に立てば、もう少しラップを落としても良いのでは…と考えがちだが、ドライバーにはリズムがある。残り時間を考えれば、マネジメントの可能な範囲で逃げた方がいい。

3スティント目、後半。いまだに2分02秒台のラップを維持し続ける山野は、3時間経過の時点で2位以下に1ラップ+1分30秒(合計約3分30秒)の貯金を作る。そして92周目、ルーティンのピットイン。給油とクールスーツ用の氷の追加を行う。ピットストップ30秒+15秒でアウト。

ところがピットアウトしてすぐに想定外の事態が起こる。警告ランプがついて、ガス欠の症状が出たと山野からの無線だ。たっぷりガソリンは補給したので、ガス欠ということはない。何か異常があることは確かだ。ラップはいきなり落ちて2分06秒。残りレース時間は45分以上ある。

無線で詳しく状況を聞くと、右コーナーで横Gがかかると、プスンプスンと息つきが起こるらしい。これは昨年の「もてぎオーバル」でも出た症状。その時は、燃料ポンプをセコンドに変えたら直ったので、今回も同じようにして様子見。が、今回は症状が改善されない。ピットに戻ってきてチェックしては挽回不可能になる上、症状が悪化するおそれもある。ある程度のラップタイムで走れるなら、そのまま走行するのがベスト、タイム差はたっぷりある。

山野は右コーナーで可能な限りGを押さえながら走る。ラップは2分09秒台だ。残りは20周、1周で後続に5~6秒詰められたとしても逆転不可能な差だが、燃料系のトラブルだけに、コース上で止まってしまえば、その瞬間にレースは終わってしまう。

あと10周、9周……5周、4周……レースクイーンも総動員、無線で山野に激励メッセージを送る。
そして、勝利のチェッカー!

From Faust A.G. Channel on [YouTube]

Faust RTのポールトゥウィンの雄姿と表彰式をムービーで!(ST-1クラス 9号車 BMW Z4)
★【YouTube:FaustA.G.チャンネル】でもご覧いただけます(スマートフォンの方 はこちらがオススメ)

ST-1クラス優勝
表彰式、シャンパンシャワーは岡本に…

ウイニングランをして戻ってきた#9 BMW Z4から降りてくる山野。出迎える堀、岡本とハイタッチ、そしてハグ。岡本は大泣きだ。チームスタッフはもちろんライバルチームのドライバー、関係者からも握手の嵐。決勝を走れなかった佐藤からの祝福メールも届いた。

続く表彰式では、レース活動を初めてから6年目、初の優勝となった岡本が、全員のドライバーからシャンパンシャワーを浴びせられた。レーシングスーツも顔もグチャグチャだが、最高の瞬間だろう。涙が出ていてもわからない。

昨年のオーバルでは山野+佐藤で優勝、今回は山野+堀+岡本で優勝。これで、レギュラードライバー全員が自分のドライブで優勝を味わった。キャプテンの堀にとってもこの優勝は格別なものとなった。堀はレース後の記者会見で、
「スムーズに優勝とはいきませんね。最後は止まるなよ、止まるなよと願うだけでした。気分は最高です。この優勝はメカニック、応援してくれた皆さん、練習やレースでサポートしてくれた皆さんのおかげです。感謝します」と締めくくった。

最高の形でレースを終えたシリーズ第2戦。シリーズポイントも2位に浮上した。次戦はスポーツランドSUGOだ。今度はレギュラードライバー3人での優勝を狙う。

 

 

Data

Twin Ring MOTEGI Road Course
2012.04.29/Course Length:4,801379Km
Weather:Sunny/Course:Dry
Faust Racing BMW Z4M COUPE
Driver堀 主知ロバート/岡本 武之/山野 直也
4h03’16.113 115LAP
ST-1クラス優勝

スーパー耐久シリーズ公式サイト
http://supertaikyu.com/

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