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「はぐれ熱帯魚を救え!」
子どもたちと海の世界を知る

「はぐれ熱帯魚」と子どもたちの出会い

晴れ渡る千葉・鴨川の磯。ひとたび潜れば、そこには熱帯魚や温帯の魚たちがいる(上)。「東京アクアリオ2010」で、窓愛園の子どもたちに目録を渡す糸見と木村(左)。実際に、窓愛園のホールに設置された巨大な水槽(右)。

千葉、鴨川の海は、その日、青く晴れ渡っていた。ファウストたちは、子どもたちと共にここを訪れた。その目的は「はぐれ熱帯魚」を助け出すこと。

夏に、六本木ヒルズで開催された「東京アクアリオ2010」において、ファウストの社会貢献プロジェクトチームキャプテンの糸見バーリン黎と、アクアリストの木村英智は、土浦にある児童養護施設「窓愛園」の子どもたちに、ガラパーティなどでチャリティを行った寄付金でアクアリウムをプレゼントした<この模様はコチラ!>。8月末には、窓愛園のホールに、プロのアクアリストたちも使うという、幅120センチもある、大きなアーティスト水槽を設置しに出かけた。園の水槽はまだ空っぽで、水しか入っていない。
そこで9月某日、いよいよ本プロジェクトのメインイベントともいうべき海での活動が行われた。ファウストの「はぐれ熱帯魚を救え!プロジェクト」の代表者、糸見と木村をはじめ、スタッフらは窓愛園の子どもたちと引率の先生らともに海に出向いたのだ。「はぐれ熱帯魚」とは、専門的に言うと「死滅回遊魚」のこと。夏の間の温かい潮流(黒潮)に乗って千葉の海まで流れ着く熱帯魚たちは、秋になって潮流が冷たくなると帰れなくなり、そのまま死滅してしまう運命にある。それを見つけて救出するとともに、環境の整ったアクアリウムで飼育しようというのだ。
「ただ、ペットショップで熱帯魚を買って来るのでは、子どもたちに海の素晴らしさが伝わらない。実際に海に潜って、魚たちと触れ合って欲しい」と、木村は言う。
子どもたちに海の素晴らしさを伝えたい。そして、園でアクアリウムを通じて、たくさんのことを学んでほしい。その思いが、この鴨川の海につながっていた。

鴨川の海で出会えた色鮮やかな魚たち

磯へと向かい、大人も子どもも夢中になって「はぐれ熱帯魚」を捜索。チョウチョウオや、スズメダイなど、本来は熱帯に生息している魚たちが見つかる。そのほかにも、エビやヤドカリなども集めて、生き物を観察。

ファウストと子どもたちが集合したのは、千葉鴨川のとある宿。糸見も木村も、意気揚々と現れた。ロビーの窓から見える空は快晴。まさに海日和だ。やがて、窓愛園の子どもたちを乗せたマイクロバスが到着。
バスから降り立った子どもたちを前に、糸見が声を上げる。
「少しでも多くのはぐれ熱帯魚を救おうね。木村さんに教えてもらって、楽しみながら安全に、サポートし合っていこう」
その言葉に、「はい!」という元気な声が返ってくる。
宿から海への道中、子どもたちはもう、「はぐれ熱帯魚」に興味津々だ。
「どんなところにいるのかなあ」
「どんな色をしているのかな」
次々と投げかけられる質問に答えながら、次第に子どもたちとの距離も近くなっていく。
やがて、浜辺から離れたところに、ごつごつとした岩が連なる磯が広がる。
「ここは、はぐれ熱帯魚のかくれスポットです」
木村は、既にここに何度か下見に訪れていた。
大人も子供も、シュノーケルを装備し、いざ海中へ。
「わあ!」
と、子どもたちの歓声があちこちで上がる。
ひとたび海に潜ると、そこには小さな魚やエビ、カニなど、生き物たちの楽園が広がっていた。子どもたちは、各々、網を手に取り、魚たちを捕ろうと必死だ。しかし、初めての挑戦ということもあり、なかなか上手くとることはできない。スイスイと逃げ回る魚を追い回す。
小さな子どもたちは、タイドプールに泳ぐエビや、ヤドカリたちに夢中だ。
「エビが透明だよ」
少女たちが声を上げる。普段、食材として見るエビとは違い、透き通って光る生き物ならではの輝きに、感動もひとしおだ。
夢中になっているのは、子どもたちばかりではない。ファウストもスタッフも、海の中の世界に引き込まれている。
「コバルトブルーの魚がいるけれど、これは何でしょう」
木村に問いかけるスタッフ。
「ルリスズメかな」
と、木村。
鴨川の海に、鮮やかな青の光を放つ魚がいる。これは本来、南洋の海に棲息している魚。まさにはぐれ熱帯魚だ。その小さな光を追って、大人も子どもも潜っていく。シュノーケルのメガネの向うに青い姿を見つけては、その感動を語り合う。
「ここに、はぐれ熱帯魚がいるよ」
木村のアドバイスで、糸見と子どもたちが一緒に向かう。すると、その小さな魚は瞬く間に岩の陰に逃げ込んでしまう。しばらくその場で待っていた子どもたちは、全く岩陰から出てこない魚に飽きて、他の場所へ。しかし、糸見は網を片手に、時折、海中に潜りながら、じーっと待つ。
「とれた!」
歓喜の声を上げ、糸見が網を掲げた。その表情はまさに子どもの笑顔のよう。
糸見がとったのは、目元にネオンのような鮮やかな色のラインが入った魚。アオスジスズメだ。
「まだまだいける」
糸見がそう言った矢先、残念ながらタイムアップ。正午を過ぎ、日差しも強くなってきたので、そこで終了となった。
持ち帰るための水槽の中には、大きなカエルウオや、エビ。ウミウシや、ヤドカリなど、たくさんの海の生き物が泳いでいる。子どもも大人もその様子に興奮が隠せない。
早速、それを窓愛園のアクアリウムに移すべく、海を後にした。

アクアリウムを見つめるプロジェクトは続く

窓愛園に到着。大きな水槽の中に、まずは海から持ってきた石を置く。その後、水質をゆっくりと調節し、少しずつ魚たちを入れていく。待ちきれない子どもたちは、水槽の周りに張り付いたまま離れない。ファウストともすっかり打ち解けて、魚の話に夢中だ。

一同は、一路、鴨川から土浦へ。
窓愛園に着く頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
ファウストたちが園に着くと、今回の魚とりのツアーに参加できなかった子どもたちが、今か今かと魚の到着を待っていた。小さな子どもたちは、ファウストたちの傍らに寄り
「おさかなさんは?」
と、問いかける。
「これから、ゆっくり入れていくからね」
と、木村。
まずは、海から持ってきた岩や藻を入れていく。岩には、タニシがついていて、これが水槽の掃除をしてくれると説明する。そして、子どもたちがとったヤドカリが入る。
水槽の水質を、魚たちのいた海に合わせてから、ゆっくりと魚を一匹ずつ入れていく。最初に入れられたのは、最も大きなカエルウオ。きれいな水槽の中にその姿が放たれると、一斉に拍手が起こった。それからも、水槽の中に魚が放たれる度に、歓声が上がる。すぐ傍らのテーブルの上には、サカナ図鑑が置かれており、
「あの魚はなんて言う名前?」
「あれはどうやって育てるの?」
という子どもたちの疑問に、ファウストたちも答えるのに必死だ。
次第に魚たちが増えていくと、子どもたちはアクアリウムの前に張りついて離れない。
「あれは僕がつかまえたやつ!」
「あのヤドカリの殻、面白い!」
と、思い思いの声を上げる。
一人の少女が、糸見の手を取り、美しいネオンスズメダイを指差す。
「あれ、お兄さんがとったやつだよね。一緒にとったよね」
と、糸見を見上げる。糸見も、
「そうだよ。大変だったね」
とうなずき、笑い合いながら、アクアリウムを見つめる。
ライトが灯されると、光の中に魚たちの世界が浮かび上がる。
「竜宮城みたい」
子供たちのその言葉から、このアクアリウムは「竜宮城」と、名付けられた。

完成した水槽。子供たちが「わあ!竜宮城みたい」と言ったことから、そのままその名は「竜宮城」に。はぐれ熱帯魚たちが泳ぐ。

その後、ファウストたちは、園の夕食に招かれた。
子どもたちも、その日の体験からたくさんのことを学んだようだ。
「はぐれ熱帯魚たちを救えて、こうして連れてきたことで、園の中に小さな海ができた」
と、真くん。
「以前は、海に行っても魚のことは知らなかった。でも、はぐれ熱帯魚のことを知って、今回、こうやって助け出すことができた。環境に対しての意識も変わり、これからも、自分たちにできることをしていきたい」
と、亮太くん。
子どもたちの海への意識も変化したようだ。

「今日一日で何日分もの思い出ができた」と糸見(左)。「観察日記をつけてね」と木村(右)。
一緒に楽しい夕食をいただき、子どもたちから、一日の感謝と、感想の言葉。「楽しかった!」というのが子どもも大人も同じ気持ち。

木村は、アクアリウムの前に立ち、子どもたちに呼びかける。
「まずは、観察日記をつけて、魚たちの様子をちゃんと見守ってね。海の生き物を育てることの難しさを体験して。そして、何年も引き継いでいけるようにしてくださいね。ちゃんとできたら、ある日こっそり、可愛い“ニモ”(カクレクマノミ)をここに入れていくかもしれませんよ」
そんな言葉に、子どもたちは大いに沸き、笑い声が起こる。
糸見もまた、子どもたちに向き合う。
「今日一日で、2日分くらいの思い出ができた気がします」
と、笑顔。そして彼は、ゆっくりと語り出す。
「こうして、海の生き物を育てるには、温度やエサなど、たくさんのことに気をつけなくてはいけない。とても大変なことです。でも、そこから学ぶことはたくさんあると思います。自分だけではなく、他のものにも目を向けていくこと、飽きずにきちんと取り組むことは、大人になってからも、きっとみんなの糧になりますから」
糸見のその言葉に、子どもたちは真っ直ぐな視線を向けて聞き入っていた。

いよいよ、別れの時が訪れた。
園の外まで見送りに出た子どもたちは、木村や糸見の手を取って、なかなか離れようとしない。二人もまた、子どもたちと語らうことに飽きることがない。
「泊っていってくれればいいのに」
そんな子供たちの声も上がる。名残惜しさもあるけれど、
「また来るからね」
二人は何度も子供たちにそう告げて、車に乗り込んだ。 
そう、このはぐれ熱帯魚プロジェクトは、これで終わりではない。引き続き、ファウストたちは、園の子どもたちとともに、アクアリウムを見守っていく。

 

寄付いただいた活動資金について

ファウスト会員をはじめとする数多くの皆様からいただきました、寄付金に基づ きまして、当プロジェクトは活動しております。
「ファウストA.G.ガラパーティ2010」にて、活動資金としてお寄せいただきま した46万円は、 窓愛園に贈りました水槽と装置一式の購入・設置費用、および千葉・鴨川にて 窓愛園の子どもたちによる魚採取時の昼食費および採取用具購入費といった実費に、その全額を充てさせていただきました。
多大なるご支援、ご協力、誠にありがとうございました。
活動は継続してまいりますので、引き続きのご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

  • ◎「はぐれ熱帯魚を救え!」 子どもたちと海の世界を知る ファウストのインタビューはコチラ!体験者インタビュー~メフィストの部屋へ~

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児童養護施設「窓愛園」
「子どもたちが快適で、安心できる生活空間」を最優先に、一般家庭ではできない、優れた環境を活かした茨城県土浦市の児童養護施設。1歳~高校生の児童約50名が暮らしています。http://www.souai.org/

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