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You Can Trust Over 30
ファウスト、ロックへの挑戦。
 

“Don’t Trust Over 30---”。好むと好まざるとに関わらず、いつの間にか人は「大人」と呼ばれるようになり、体制に組み込まれた保守的な人間になってしまうことを揶揄、 嫌悪した、ヒッピームーブメントにおける名文句。Faust世代はとうにその季節を過ぎ、この言葉を受け取る側になってしまった。もっとも、そんな言葉を 今の10代が知っているかどうかは謎だけれど、ドキドキしながら初めてのレコードを買った、その頃のことを覚えている人が果たしてどれだけいるだろう。

あんなに毎日のように聞いていたロックを忘れ、「いい大人」が集うべきは、ほんの少しドレスアップしていけるJazz Club。あるいは「手習い」として嗜むべきはオペラやクラシック? 日本古来の伝統芸能や芸事…? 巷に溢れる「大人」的情報は、ストレスの多い毎日を 優しく癒してくれる骨身に優しい(?)ジェントルなものばかり。もちろん、それらの世界も日常的に慣れ親しんでいるのがFaustだが、最も影響を受けた はずのあのワイルドな世界はどこに? 30を過ぎたころに既に過去として葬り去られているのだろうか? 我々が今夜ここで見つけた答えは「NO」だ。
 

ZOKKON BOYS。平均年齢41歳。

ステージに映し出されたZOKKON BOYSのCGとともに、ステージの幕が上がる。

去る11月某日。FaustA.G.のメンバーが主催するライブが行われるという噂を聞きつけ、Faustの仲間たちは深夜の西麻布へ向かっていた。出演はZokkon Boys とLovefunkyという二つのバンド。

ヴェニューである外苑西通りのクラブXROSSの扉を開けると、地下フロアから懐かしいギターの旋律が大音量で流れてくる。最初の演目はQueenの ‘We will rock you’。続いてBon Joviの‘Livin on a prayer’、Lenny Kravitz の‘Are you gonna go my way’、Blondieの‘Call Me’と80’s-90’s Rockの名曲がシームレスに続き、そしてRadio Head の’Creep‘の優しい調べへ。そのパワフルな、ときに情感豊かなメロディに、時間と場所は曖昧になり、当時の風景が流れ——音楽は香りと同様、一瞬で 人を過去へと連れ去るタイムマシーンだと思い知らされる。その瞬間に、心が締め付けられるような気がするのは、すっかり忘れていた昔の友人に出会ったよう な錯覚を覚えるからかも知れない。

ステージには、RGBの照明にFaustたちが浮かび上がっていた。メンバー構成はヴォーカル大崎彰(Akira-Osaki-Elegance)、亀井 孝明(Kame-chan)、小山輝(Koyama-chan)、メインギター波多野明男(Akio-Chan)、ベース三浦竜介(Miu-miu)(※ 以上Faust。以下本文中の敬称略)、紅一点のキーボードに亜希子(Aki-chan)。サポートメンバーとしてドラム増井雅(Massay)、サブギ ターはイオリ(Iori)。ゲストボーカルには今回クリス・ヘプラー、東小百合、清水良祐らが参加していた。

圧巻は波多野の激しく的確なギターリフ。インスト中にステージを離れていた小山が挑発的な腰のグラインドとともに再登場した。キャーという黄色い歓声はギ ターの爆音にかき消されてしまったものの、会場が大いに盛り上がっていたことは確か。こんなに楽しそうな大人たちの姿なんて滅多に見られるものではない、 と思いつつ、これでもかと繰り広げられる名曲のオンパレードに酔いしれた(※)。

※演奏順に Chasing Cars(Snow Patrol) Where Streets Has No Name(U2) Bye the way(Red Hot Chili Peppers) You Really Got Me(Van Halen) Born To Be Wild(The Cult)、20th Century Boy(T.REX) 、Walk This Way(Run D.M.C/Aerosmith)、Don't Stop Me Now(Queen)、Burn(Deep Purple) 

会場に集った観客はメンバーの友人たちを中心に総勢200名ほど。20代から40代を中心とするファッショナブルな面々が、懐かしい笑顔にほころび、無邪 気さをにじませる風景。それはこの場に集った人々が、きっと同じ音楽に、同じように感動して育ったのだと思える不思議な感動を呼び起こすものだった。
 

Are you gonna go my way?
やりたいことはすべてやる! 

リーダー&ギターの波多野明男さん。わずか4年で超絶の早弾きプレイヤーへと進化した。

バンドリーダーの波多野がギターを始めたのは4年前。ロック・クラシックスを客が飛び入りで演奏できる青山・日赤通りのライブハウスに連れられて行ったとき、その楽しさを思い出したのがきっかけだった。
「この店は音楽業界のプロもよく来る店なんですよ。」
気がつくと来日中の超VIPミュージシャンがギターをかき鳴らしていることもある。
「知らない人とも一緒に演奏するから自然に仲良くなるんです」。
Zokkon Boysのライブにゲストヴォーカルで参加したクリス・ぺプラーも、その店で親しくなった音楽仲間。いつしかこの店は練習の場兼溜まり場となっていった。

常に新しいことに貪欲に挑戦する波多野は、バンド経験もこのZokkon Boysが初めてだ。
「最初のステージ体験は、今思えば、小学生2年生の時。150人の生徒たちの前で、6年生の先輩にそそのかされて『エルビス・プレスリー ショウ』のワンマンライブ。先輩は小学生から10円づつ集めてましたね(笑)」。
更に大きなステージは高校時代に毎年参加していたカーメルでのサマーキャンプで。日本人はたったひとりの参加ながらボス格として君臨していたという当時、地元で開催されたエアギターコンテストで、パワーステーションの‘get it on’を演奏し、なんと優勝。
「当時パワーステーションが出たばっかりで、めっちゃデケデケやりまくって、優勝したの。演奏じゃなくて、パフォーマンスで。そこから24年たって、ようやく演奏できるようになったという(笑)」。

このバンド活動の音頭をとったのも、波多野だった。
「4年前に会社を辞め、自分で会社を興した時、それまでの生活を全部変えようと思ったんです。ライフスタイルも仕事も、自分のやりたいことしかやらない。そしてやりたいこと、興味のあることは全部やってやろう、と決めた」
それから毎日のようにギターを練習し、ライブハウスに通いつめるようになった。持ち前の勘の良さと尋常ならざる集中力で、彼の腕は瞬く間に上達していく。そんな折、今回のライブを共に開催することになるLovefunkyの苅田修に再会した。

「今まで飲んで遊んでいるところしか知らなかった。最近ギターをやっていると聞いて、見てみたらめちゃめちゃ真剣にやっていたんですよ。だから、一緒にやろうってことになったの。結構早弾きやってたんでね」
東大卒業後、銀行員になった苅田は同時にプロダクション、ライジングに所属していたという本格派。作詞作曲も手がけるシンガーソングライターとして8年間 活動した後に外資系コンサルティング会社に転職。その後は音楽を我慢しひたすら仕事に明け暮れた。久しぶりに波多野に再会したのは、パートナー&マネージ ングディレクターになったのを機に「また音楽をやろう!」と思った矢先のことだった。

左:ゲストヴォーカリストとして、クリス・ぺプラーさんも参加。‘20th Century Boy’を熱唱。
中央:左から小山輝さん、波多野明男さん、クリス・ぺプラーさん。
右:波多野さんがライブを企画するきっかけになったのはLovefunky苅田修さんとの再会。苅田さん自身も、ファウスト。飽くなき挑戦者である。

写真左・全身に電飾を巻き妖しげなスタイルでパフォーマンスを繰り広げる大崎彰さん。
写真右・ベース三浦竜介さん。当日は熱を出しながらもリズムを刻み続けた

ステージで電飾を身にまとい、甘い低音を轟かせていたヴォーカル大崎と、安定したプレイで常にクールなベーシストぶりを発揮する三浦は共に学生時代にバン ド経験あり。大崎は小学生時代にCharに憧れ、自ら進んでボイストレーニングを受けていたというツワモノだ。三浦さんは中学時代にローリング・ストーン ズに憧れギターを弾いていたが、前回2008年7月の初ライブをきっかけにベース担当となり、これもわずか一か月という短期間で猛特訓、上達を見せた。

一方、ヴォーカル小山の音楽的バックグラウンドは幼少時代からのピアノ。テレビも見ず、専らクラシックを聞いて育ったという彼の最初の衝撃レコードは、意外にもマイケル・ジャクソンの『スリラー』。あの腰のグラインドはマイケル仕込みだったというべきか。

「あのアクションはロックじゃないから!」(亀井) 
「ヴァン・ヘイレンはもっとこんなんだよ!」(小山)
後日行われた練習後の反省会では、バンドのクリエイティブ・ディレクターを務める亀井にダメ出しされながらも、穏やかな小山は「ものすごく好きか嫌いか。 評価が分かれるもののほうがいいんですよ」と笑って反論。その脇で「こういう個性のぶつかり合いが面白いよね。みんなバラバラなのに、一緒にやっているの が面白い」と波多野がリーダーらしい解説をはさむ。

写真左・伸びの良い声が印象的なヴォーカル小山輝さん。「あのアクションは凄い!」と波多野さんは絶賛。
写真右・ヴォーカル亀井孝明さん。個性の異なるヴォーカリストがそれぞれの曲を担当する。

幼少期にロスで育った亀井の最初のレコードはKISS。当時のクラスメイトがRATのメンバーとなったギタリストの息子だったという理由でハードロックにのめり込み、以降LAロックに限らずありとあらゆる音楽に傾倒したという。
「ニルヴァーナ、ピクシーズ、ストーンズがずっとヒーローでした。U2もね。中学時代にはバンドでヴォーカルをやっていて…曲はデフ・レパードとか…って、全然、変わってないですね、俺!」 

現在は広告代理店に勤務。人脈を駆使し、ライブのバックスクリーン映像は、トップアーティストのコンサート映像も手掛けるクリエイターに制作依頼した。映 像だけではなく、PAなどもプロを起用し、メンバー全員が音づくりから環境までのすべてを本格的に仕上げることに余念がない。そのこだわりはFaustの Faustたるゆえん。そして「いい大人」のバンド活動ならではの強みかもしれない。なにしろ、あの頃とは違い、友人たちの才能は既に多方面で開花してい るのだから。

Don’t Stop Me Now!
真剣に。やるからにはプロを目指す

「アマチュアってのは一生懸命やって、そこに面白さがでる、というのがいいと思うんだよね」
深夜の反省会では、大崎と亀井が大人のバンドの「面白さ」について分析していた。
「野球でもアマチュアがふざけて投げていると全然面白くないでしょう。だから僕らの目標は、もっともっとうまくなって、本当にオチャラケられるレベルになったらオチャラケようってことだよね」。
スネークマンショウに影響された世代。大人の余裕は「面白いこと」で表現したいという気持ちもある。しかしウケを狙うレベルでもない。真剣に取り組まなければロックじゃない、とも思う
すると波多野は確信に満ちた表情で、今後のヴィジョンを語った。
「やるからには当然プロとしてお客さんに来てもらえるようなバンドが目標だよ。当面の目標は3000人の聴衆の前でライブ。でも今はバンドとしてもまだま だだし、曲もカヴァーばかりだから、今の段階ではライブは皆が楽しんでくれるちょっと毛色の変わったパーティでいい。そこに新しい出会いがあればいいと思 うんだ。Zokkon Boysは、男がワイルドさを忘れないための、少子化対策プロジェクトでもあることだし(笑)」

今回のライブはカヴァー曲だったが、少しづつオリジナル曲を書きためている。
「とにかく、まずは自信を持って出せる曲を作らなきゃ。全員が満足いかなければボツ。もっともっと、やりたいことは沢山あるけど、順番にね、順番に———」

「やるからには『ポニョ』レベルだな!」
そう。ビジネスの世界に身を置きつつ、プロとして活動するミュージシャンは実は意外に多いのだ。Zokkon Boys=ロックし続けるファウストたちの活躍も決して無理な夢ではない。

飽くなき挑戦を続ける男たち。自分が夢中になれることに熱中するのに、いつから始めようが関係ない。やるからには真剣にやる。その潔さとポジティブさを目の当たりにして、少し嬉しくなっていると、隣に座った小山が呟いた。
「5歳と7歳の子どもたちが僕の車に乗ると、『We Will Rock You 』をかけてと言うんですよ。最初は僕が練習のために聞いていたんだけれど、今は彼らのほうが上手いかも」
いつまでもロックしつづける大人を見て育つ子供たちは幸せだ。彼らはきっと、30歳になろうが40歳になろうが「人は挑戦し続けることができる」と、信じていけるだろうから。

Profile

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ZOKKON BOYS

2008年6月結成。同年7月西麻布XROSSにて初ライブ。一か月の猛特訓でロック・クラシックスを披露。その後方向性の違いからかギタリスト一名が脱 退。11月に同クラブで2回目のライブを開催。現在の正式メンバーはヴォーカルに大崎彰(株式会社ブティックオーサキ インターナショナル代表取締役)、亀井孝明(広告代理店勤務)、小山輝(MAKPartners株式会社代表取締役)、リードギターに波多野明男(株式会 社ファセット代表取締役社長)ベース三浦竜介(株式会社シー・エム・シー代表取締役社長)らのファウスト5名と、キーボードの亜希子さん。週3回というハ イペースでステージ練習を行いつつ、熱い想いを熟成中。

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