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100年を生きたグランヴァンとのわずか2分の邂逅
 

6月某日、元麻布の閑静な住宅街のただ中にひっそりと存在するレストランへ、Faustたちが集まりつつありました。
「flow」。
その日でちょうどオープン一周年を迎える、Faustたちが夜ごと集い、飲み、語らう、少しだけ特別なワインレストランです。
話は少し遡り、数か月前のある日、その店の麗しき支配人・松原その子さんにFaustの一人がこう言いました。
「もう少しで、このお店も一周年だね。それで思いついたんだけれど、ここのワインリストには、1908年のシャトー・ラフィット・ロートシルトが載ってい るよね。それを、このお店の一周年のお祝いに開けるっていうのはどう? 100年物のワインを、1周年のお店で、という趣向きで」
そもそも1908年のシャトー・ラフィット・ロートシルトは、松原さんがこのお店をオープンするとき、flowのワインリストのシンボルとして、知人を介 してワイン商から買い求めたもの。聞くところによると、保存状態はすこぶるいいということらしい。シャトーからワイン商のセラーに移り、89年にシャトー の人を呼びよせてワインの延命をするリコルク(※)をしたのみという。フランス・メドック地区の5大シャトーの中でも、しばしば筆頭にあげられる名品。非 常な長期熟成タイプとして知られるそのワインは、100年という時を、いかにして眠り続けたのでしょうか――。
松原さんもそのアイデアに喜び、賛同。この一周年に向け、ほかのFaustたちが店を訪れると、耳元で「あのラフィット、一周年に開けましょうよ♪」と呪文のように囁き続けました。なにしろそんな特別なワイン。気の置けない仲間たちと開けて、記念日を祝いたいものです。

100年の眠りからの目覚めを待つ。

「flow」一周年の「1」をかたどったバースデーケーキ。

話を現在に戻します。そうして誘い集められたFaustたち6人が、flowへと集まりつつありあした。約束の7時ぴったりに現われたのは、この会を言いだしたあのFaust。
「あれ? まだ誰も来ていないのか。みんなゴルフの帰りに渋滞につかまっているって?」
仕方がないな、と愚痴をこぼしながら、一周年のお祝いにと、松原さんにシガー用のカッターとパンチを贈ります。ほどなく、集まり始めるFaustたち。あ る人は、艶やかなアレンジメントフラワー、ある人はヒュミドールとシガー、ある人は白ワイン……Faustたちのプレゼントで、自然とパーティの演出が 整っていきます。

一世紀の眠りからの覚醒

そして運ばれてくる、flowのこの日のための料理。大きな殻つきホタテ、短角牛や松坂ポークのグリル、フォアグラのパイ包み焼き…。シャンパーニュのマグナムボトルや、プレゼントの白ワインなどが空いていき――ついに“出番”が巡ってきました。

「Chateau Lafite-Rothschild 1908」。

支配人の松原さんも今日はサービス役だけではなく、Faustたちとともに食事を楽しむ場面も。

エントランスをくぐると目に入るウオークインワインセラーには名だたる銘醸ワインが。

止まりそうなほどゆっくり注いでいく。

松原さんはこのときのために、永い間横になっていたボトルを徐々に縦に起こし、オリをボトルの底へと沈殿させていました。Faustたちの注目が集まる中、シールがはがされ、コルクにソムリエナイフのスクリューが差し込まれます。
「すいすい刺さっていくわ」「ダメになっているのか?」
固唾を呑んで見守るファイストたちを前に、松原さんは緊張の面持ちで、テコを利かせてコルクをゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと引いていく――抜けました。
ふぅー、と安堵とも取れない空気が流れ、順番にコルクの香りをかぐFaustたち。期待が高まります。
ラフィットは、松原さんにより、細心の注意を払って慎重に―あまりにゆっくりなので「腕が保たない!」と悲鳴を上げたほど―10杯のワイングラスに注がれ ました(デキャンタージュはしないと事前に相談して決めていたので)。香りをかぎ、色を見るFaustたち。褐色がかった深いルビー色とでも言いましょう か。
「――それでは」
各々がグラスを傾け、そろり、そろりとその液体を唇へと運んでいく。
いいようのない感嘆、不思議な沈黙。
「ラフィットという存在を飲んでいる、そんな感覚とでも言えばいいのかしら」
ある女性が感想を口にし、「それがふさわしい」とFaustたちは賛辞を述べ、100年の歴史に敬意を払うように、そのワインをかみしめるように味わいました。
「(注いでから)2分の間に目まぐるしい変化をみせ、香りは果てたようだ。ものにもよるが、ワインは抜栓して空気に触れると、時間をかけて香りや味が花開いてゆくものだが、これはそういう型にはまる存在ではなかったな」

ほんとうに幸せそうな笑顔を見せる松原さん


1908年といえば、第4回の夏季オリンピックがロンドンで開催し、中国では清朝の時代にラストエンペラー溥儀が即位。日本では、第一回ブラジル移民の船が神戸港を出発した年だといいます。
100年前にフランスの田舎で醸されたワインがいくつかの出会いを経て、現代の元麻布で口にされるという、稀有な邂逅。100年、1周年、Faustとい う仲間たちが交錯したからこそ生まれた刹那。この日でなければ、100年を超すワインが開けられるのは、いつになっていたのか計り知れません。
――あなたならそんなワインを、どうやって100年の眠りから解放してあげることができますか? 

※リコルク 熟成によって中身の減ったボトルに、ワインを継ぎ足す行為。目的はワインの延命。注ぎ足すワインは、同ヴィンテージの場合と新しいヴィンテージの場合がある。

Data

flow(フロウ)
東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布B1F
Tel 03-5771-6352
Open 18:00~26:00 
日祝休
http://www.f-flow.com/


 

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