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Rogen Ebihara

海老原露巌

墨アーティスト

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「書」から、五感の全てで芸術を感じて欲しい

音楽を奏でるような躍動感あふれる筆の流れ。
そして濃淡を併せ持つ独特の墨の色。
「書」は、日本人であれば誰もが一度は目にしたことがある芸術の一つだ。しかし、これまでの「書」という枠を越え、自由に魂を表現するのが、墨アーティスト、海老原露巌。
彼は魂を表現するため、時には書の原点である中国を訪れ、時には太古の森の奥深くまで足を踏み入れる。そこでじっと紙と向き合い、墨の流れとして表現している。

「時を掴む」ために古刹から森の奥まで
冒険を続けながら書く

彼が書道を始めたのはわずか四歳の時。しかし書道家としての道を決めたきっかけは、実に意外なものであった。
「レッド・ツェッペリンの大ファンだったのです。その音楽に魅せられて、こんな風に表現をするアーティストになりたいと思いました。そしてその表現方法として私が選んだのが、書だったのです」
彼の書は、ただじっと端坐して紙と向き合うといったものではない。その行動力は目を見張るものがある。
四世紀中国に生きた王羲之は、現在に至るまでの書道の原型を創った人物とされ、その影響は奈良時代の日本にも及んでいる。史上最も優れた書家であり、書聖と称される人物である。露巌もまたその王羲之の書に魅せられた。王羲之の最も有名な書である「蘭亭序」の真筆は今、中国の太宗帝の陵墓である昭陵に皇帝と共に埋められていると言われている。露巌は自らその昭陵に足を運び、その頂で「蘭亭序」を書いた。
「こんな真似をした人は、中国にもおらず、世界で唯一私だけだそうです」
露巌はそう言って笑う。それでもそうせずにはいられなかった。
「実際に昭陵に上り、その土地の風と空気を感じながら書く。すると、その古典に宿る魂を自らの内に取り込むことができるのです。そうして書いた作品は、まさに時を掴んだ!という実感があるのです」
この「時を掴む」という感覚こそが、露巌の作品に魂を吹き込む。
「時を掴む」のは何もこの昭陵だけではない。世界のさまざまな遺跡にも足を運び、その場で書くという挑戦を続けている。

「抱雲」
「COSMIC DANCE」
「BLACK IN BLACK」

国境も越えて、文字を越えて
アートを通した感性の交流



大興善寺落慶法要式への招待状

こうして表現された作品は、国内のみならず海外でも高く評価されている。
書の発祥の地である中国でも、露巌の書に魅せられる人々は多い。
奈良時代、空海が留学したという大興善寺の落慶法要式に招かれるなど、文化交流も深い。また、日本に渡り仏教を広めた鑑真和尚ゆかりの名刹である中国の大明寺でも、露巌氏の作品を高く評価し、「曜」という作品を収蔵している。
「この大明寺という寺には、書の発展に大きく貢献した清朝の皇帝、乾隆帝の庭園があります。この乾隆帝も、私にとっては縁がある存在です」
露巌は作品制作の際に古墨を使う。この墨は乾隆帝墨と呼ばれている大変貴重なもの。露巌はそれを五本所持しており、ここぞという時にはその墨を用いて作品を創る。
「ゆっくりと乾隆帝墨をすると、その中に封じられた時が解放されます」
独特の風合いを醸し出すその乾隆帝墨に魅せられた露巌は、その墨の表現力を再現するために、現在も試行錯誤を続けている。
「古墨を用いずに、古墨の風合いを表現する。これは私の挑戦でもあります」
乾隆帝と空海。いずれも書と縁の深い二人の存在と、国境を越え時空を超えて、露巌は交流を深めている。
露巌の作品への評価は漢字圏に留まらない。
露巌がかつてマレーシアの森の中で出会った古木にインスピレーションを得て書いた作品『Black in Black』は、ヨーロッパでの評価も高い。
「この作品は、ある著名なイタリア人から『セザンヌに似ている』と言われたことがあります」
文字という枠にはまらない露巌の表現力をうかがわせる。
また、露巌が書家になるきっかけとなったレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジも、今では露巌と交流を深めるアーティストである。
「彼と出会ったきっかけは、私がレッド・ツェッペリンのコレクターであったことでした。しかし当時、既に書家になっていた私は一ファンとしてではなく、アーティスト同士として交流することができました。彼は私の作品を認めてくれている一人なのです」
と、露巌は語る。
あるとき、露巌が書いた「壁」という文字を見たジミー・ペイジは、その漢字を読むことはできなかった。しかしじっと見つめた後で「これは人類が越えなくてはならないものだね」と評したという。まさに文字としてではなく、そこに表現されたものまで伝える。露巌の感性とジミーの感性が確かに通じ合っている証でもある。

本物に触れることで
書の美しさを知る感性を呼び覚ます

そんな露巌はこれから何に挑戦していきたいのだろうか。
「ここ数年間、私は制作よりもインプットに重点を置いて活動してきました。これからは手に入れたものを還元していくときだと考えています。そのためにも、新しい書人の育成に努めていきたいのです」
露巌の教室には、現在、会社経営者、政界、財界、芸能界からの人々が集う。
その教室ではまず、ゆっくりと20分かけて墨をする。この時間が大切なのだと露巌は言う。
「墨をすることによって、その香りを楽しみ、心を鎮めることができます。それから書と向き合うことが大切なのです」
最近では、書家を名乗る人々の中にも墨汁を用いることがあるという。露巌はそれは書の本当の魅力を損なうものだと感じている。露巌の教室を訪れる生徒たちもまた、その「本物」にこだわる露巌のスタイルに賛同している。
また、生徒たちが書くものも一つの見本に従うのではない。
「書には人となりが表れると言われています。そして好む書もまた人それぞれです。だから、生徒さんたちには自分の好きな書を選んでもらい、それを習ってもらっています」
王羲之を書く人がいれば、空海を書く人がいる。それぞれがそれぞれに、静かに書と向かい合う時間を持っているのだ。
「書を美しいと感じる感性は、私たち日本人の中に脈々と流れていると思います。それを呼び覚まして欲しい。それはこれからの私のミッションだと信じています」

そしてそのことを伝えるためには、他のアートとのコラボレーションも行っている。
たとえば料理。世界でも注目を集めるレストランNOBUのオーナーNOBU MATSUHISAと食とアートのコラボレーションを実現。 レセプションでは、笛方藤田流十一世宗家藤田六郎兵衛氏の笛にあわせ、 書をしたためるパフォーマンスを行った。
「五感の全てで芸術を感じて欲しい。私の書を見て、それを味わう。これは全く新しい書を感じる方法だと思う」
露巌は言う。
その他にも、クラシック CDジャケットのデザイン監修を行う など、さまざまなシーンで露巌の世界観を表現している。
冒険、挑戦、貢献。この三つを、書というものを通して実現していく露巌は、まさにファウストの名に相応しいアーティストである。

海老原露巌先生が懇切指導!
書道教室「書巌の会」

墨アーティストROGENの異名をもつ海老原露巌が直接指導を行うセミプライベートな書道教室「書巌の会」を毎月4、5回のペースで開催中。 仕事などの都合に合わせて日程調整も可能なので、会社経営者、政界財界、芸能界からの参加者も多く在籍している。体験指導も行っているので、ご興味のある方は、ぜひ!
※実際に入会の際には会員規約に同意する必要があることをあらかじめご了承のうえご参加下さい。

Data

体験コース:1回5,000円
教室場所:国際文化会館 (港区六本木5-11-16)
※教室には何も持たず参加可。すべて無償貸与
体験希望や日程についてなどの問い合わせは、下記まで。
有限会社 海老原露巌事務所
michiko@hiks.jp / britishelegance@gmail.com

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Rogen Ebihara
海老原露巌

墨アーティスト


書家。墨アーティスト。1961年栃木県生まれ。4歳より書を学ぶ。作品はヴァティカン市ローマ法王庁、カナダ・ケベック州立文明美術館などに収蔵され、国際的な評価も高い。また各地で個展を開くほか、映画、舞台作品、TV番組、書籍などの題字制作も多数手がける。

海老原露巌オフィシャルサイト
http://sumigraph.com/

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